特定処遇改善加算の不正受給に関する懸念点

特定処遇改善加算が導入されれば、勤続年数10年以上の介護福祉士の給与が大幅にアップする可能性があり、介護業界ではリーダー格のベテラン職員を確保する有効な手段として期待されている。その一方で、いくつかの点について懸念の声が上がっていることも事実である。特定処遇改善加算の前に導入された処遇改善加算制度では、介護職員全体の賃金底上げを目的に発案されたものだったが、その制度の不正受給が摘発されたことも事実である。処遇改善加算は、全額を職員の給与に反映させなければならないことになっている。ところが、全額を職員に支給せず施設の補修など他の用途に流用した事業所が散見された。中でも受給資格のない職員に支給してしまった事例が多く、問題となっている。

また、処遇改善加算を取得した事業所は、行政機関に実績報告書を提出する義務があるのだが、これを提出せず受給額の返還を求められるケースもある。更に悪質なケースでは、実際には職員に支給していないにもかかわらず、支給したかのように偽装した虚偽の報告書を提出したという事例もあったのだ。このような処遇改善加算の不正受給については、特定処遇改善加算においても同様の事件が起きるのではないかと懸念されている。特定処遇改善加算の受給資格のある介護福祉士の要件に勤続年数が付加されているが、勤続年数の認定は各事業所の管理者に任されているので改ざんや捏造が比較的容易ではないかと指摘されている。